事業系ゴミ・産業廃棄物に関する品目・用語・覚えておくべきキーワード集
突然ですが、みなさんは「専ら物」という言葉を聞いたことがありますか?専ら物とは、とある廃棄物を指すもので、事業を営んでいる方であれば、知っておいてほしい言葉です。今回は「専ら物」がどのようなものか説明していきます。
専ら物(もっぱらぶつ)とは、正式名称を「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物または一般廃棄物」といい、廃棄物の中で再生利用(リサイクル)を主目的とする、古紙(紙くず)、金属くず、ガラスくず、古繊維(繊維くず)のことを指します。
ただし、廃棄物は場合によっては別の品目が混ざってしまっていたり、アスベストやPCBといった危険な物質が含まれてしまっていたりする場合もありますので、この4品目であれば専ら物であるということには必ずしもならないこと、専ら物とは無償または有償で回収してもらうものを指し、引き渡した結果金銭などを受け取るものは有価物と呼ばれ、専ら物にはならないことに注意が必要です。
専ら物は、廃棄物であることに変わりはありませんので、廃棄物処理法(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」以下、廃掃法)が適用されますが、廃掃法第14条第1項ただし書きによりマニフェストの発行が免除されるなど一部規制が免除されます(詳細は後述)。
専ら物とは、古紙(紙くず)、金属くず、空きビン類、古繊維(繊維くず)のことを指すことは紹介しましたが、具体的にどのようなものが専ら物になるのか紹介します。
専ら物 |
具体例 |
古紙(紙くず) |
新聞紙、雑誌、段ボール など |
金属くず |
空き缶(アルミ)、アルミくず、鉄くず など |
ガラスくず |
空きビン、板ガラス など |
古繊維(繊維くず) |
古着 など |
専ら物で免除されることを説明していきます。ただし、専ら物を扱う場合に免除されるだけですので、専ら物以外も取り扱う場合には、許可取得や契約書の作成などは免除されませんので注意してください。
また、免除に関しては、既存のリサイクル業者が許可取得するなどの負担を軽減する目的で規定されていますので、すでに許可を取得している場合であれば、通常の産業廃棄物として一緒に扱ったほうが楽な場合もあります。
通常の産業廃棄物であれば、収集運搬・処理に際して産業廃棄物収集運搬・処理業の許可取得が必要になりますが、専ら物の場合には、この許可の取得が免除されます。
産業廃棄物の処理を委託する場合には、排出事業者側でマニフェストの発行が必要になりますが、専ら物の場合にはマニフェストの発行が免除されます。
許可業者は廃掃法に従い、車両表示などの運搬基準や保管基準が課されますが、専ら物の場合は産業廃棄物収集運搬業の許可取得が免除されるため、運搬基準や保管基準は適用されません。
しかし、万が一運搬・保管時に飛散事故などがあった場合には責任追及されてしまいますので、基本的な対策はきちんと行う必要があります。
処理実績報告義務
処理実績報告は、許可業者に提出が義務付けられているものですので、許可取得が免除されている場合には、報告の義務は免除されます。
専ら物は、再利用を目的として収集されていますので、必ずマテリアルリサイクルを実施する必要があります。マテリアルリサイクルとは、古紙から新聞紙や包装用紙を作ったり、ペットボトルから同じくボトルを精製したりなど回収した物(マテリアル)から別の物(マテリアル)を作り出すリサイクル方法です。
仮に焼却処分などリサイクル以外の方法で処理した場合、それはリサイクルをしたことにはならず、普通の廃棄物を処理したと判断されますので、専ら物の特例は認められず、許可を持った処理業者が対応しなければならなくなってしまいます。
以下にリサイクルの例を紹介します。
専ら物 |
リサイクル例 |
古紙(紙くず) |
古紙パルプを使用した再生紙、セルロースファイバ(住宅用断熱材) 鶏卵用トレーなどのパルプモールド、コンクリートの型枠 など |
金属くず |
精錬により純度の高い金属にして再利用 |
ガラスくず |
ガラス原料の”カレット”、路盤材、セメントの再生骨材 など |
古繊維(繊維くず) |
中古衣料、ウエス、自動車の内装材フェルト、建材(断熱材など) 作業用手袋(軍手)、クッションの中綿 など |
専ら物を専門に取り扱う運搬業者や処分業者のことを専ら業者と言い、これらの業者は、収集運搬や処理業の許可が必要ではないため、廃掃法で規定されている業者に向けた処理基準も適用されません。
しかし、専ら業者とは、あくまでも廃棄物を取り扱う業者のことで、古紙をトイレットペーパーと交換してくれる古紙回収業者や、金属スクラップを買い取るスクラップ業者などは、対象となる品目を有価物として扱っているため、厳密には専ら業者とは言いませんので注意してください。
専ら物と比較されるものとして、有価物があります。有価物とは、他人に有償で売却できる物を指し、引き渡しの対価として金銭などを受け取ることになります。有価物は、廃棄物として扱われないため、廃掃法は適用されません。
有価物になるかどうかの明確な定義は存在せず、物の性状、排出状況、取引価値の有無などを考慮したうえで有価物であると判断されます。
今回は、専ら物について紹介してきました。専ら物とは、古紙(紙くず)、金属くず、ガラスくず、古繊維(繊維くず)のことであり、同じくよくリサイクルされるペットボトルは含みませんので注意してください。また、専ら物と思われるものでも実は違う場合もありますので、回収業者に確認しましょう。
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