事業系ゴミ・産業廃棄物に関する品目・用語・覚えておくべきキーワード集
産業廃棄物の一つとして、ゴムくずというものがありますが、名前だけでは具体的にどのようなものかよくわからないと思います。今回はゴムくずとはどのようなものなのかを説明していきます。
ゴムくずとは、天然ゴムの原料で構成された廃棄物のことです。紙くずや繊維くずとは違い、排出される産業が限られるものではありません。
ゴムくずについては、清掃に関する法律施行令第2条5号(廃棄物処理法第2条4項1号)や環境省が1971年10月25日に公布した「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に伴う留意事項について」で定められています。
ゴムくずというと、廃タイヤ等をイメージしがちですが、合成ゴムを主原料とした廃棄物はゴムくずではなく「廃プラスチック類」として扱われますので、注意が必要です。
環境省が発表した令和元年度の「産業廃棄物の排出・処理状況等」によると、ゴムくずの年間排出量は17千トンで、排出量そのものは決して多くはありません。しかし処理状況をみると、再生利用が約6割、最終処分が約3割となっており、再生利用率は産業廃棄物全体の中でも低いことになります。
また、最終処分率は、燃え殻に次ぐ2位の数値となっており、処理方法に関する課題が残っている産業廃棄物です。
天然ゴムとは、ゴムノキから採取される樹液であるラテックスを加工して作られるものです。天然ゴムの生産地は、主にタイやインドネシア、マレーシア、ベトナムといった東南アジアで、タイヤ・チューブや布テープの接着剤、輪ゴムなどに活用されています。
天然ゴムは熱や薬品類に弱いという特徴がありますが、強度や弾力性、耐摩耗性などは合成ゴムよりも優れています。天然ゴムの多くは、タイヤ・チューブに利用され、身近なものでは布テープの接着材や輪ゴム等に利用されています。
合成ゴムとは原料である原油から石油を精製する過程で発生するナフサを用いて製造するもので、タイヤや長靴などが該当します。合成高分子化合物※が含まれているゴムは合成ゴムと呼ばれ、産業廃棄物としてはゴムくずではなく廃プラスチック類に分類されます。
そのため、先にも述べましたが、合成ゴムが主原料である廃タイヤは廃プラスチック類となります。合成ゴムは天然ゴムと比べて強度や柔軟性が劣りますが、天然ゴムよりも安価に、さまざまな性質をもった製品を作ることができる点で重宝されています。
合成高分子化合物とは、人工的に合成された高分子化合物のことで、合成樹脂(ペットボトルなど)、合成ゴム(タイヤなど)、合成繊維が該当します。
ゴムくずとは天然ゴムを利用したものに限られているため、天然ゴムの裁断くずや切断くず、ゴム引布くず※、エボナイトくず※などが該当します。
布にゴムを貼り合わせたシートで、布とゴムの特性を併せ持った複合材料のこと
硬く光沢をもったゴムで、外観がコクタン(ebony)に似ていることからエボナイトと呼ばれており、耐候性・耐酸性・耐アルカリ性に優れ、機械的強度が強いという特徴があります。
ゴムくずは、路盤材やセメントの原料、ゴムチップとしてリサイクルすることができます。ゴムくずを適切な形で処理した後、焼却後に発生した焼却灰を、路盤材やセメントの原料としてリサイクルすることになります。また、ゴムくずを粉砕してゴムチップに加工した後、燃料にすることになります。
その他、焼却する際に発生した熱を発電などのエネルギーとして再利用(サーマルリサイクル)することもあります。
ゴムくずの多くは、そのままの状態、または選別・粉砕された後に焼却・溶融処理を実施し、最終処分場に埋立されます。
現在では、石油資源の枯渇が危惧されており、原油を原料としている合成ゴムも将来なくなる可能性もあります。
そこで、天然ゴムを持続可能な資源とするために様々な取り組みが行われています。国際ゴム研究会が提唱する「SNR-i (Sustainable Natural Rubber Initiative)」では、生産性向上の支援、森林の持続性支援、水の管理、天然ゴムの品質向上、人権や労働基本権への配慮というサプライチェーンに関する5つの領域における指針を設定しています。
ブリヂストンや住友ゴム、東洋ゴム、ミシュランなどが賛同しており、「SNR-i」が求める事項について取り組み、環境・社会と調和した天然ゴムの調達を推進しています。ゴムノキを栽培するためには広大な土地が必要であり、天然ゴムの生産拡大に伴う生態系破壊や森林破壊が問題となっています。
また、2018年10月には企業やNGOが「持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム:GPSNR(Global Platform for Sustainable Natural Rubber)」を設立するなど、持続可能な資源とするための取り組みが世界的に行われています。
今回は、産業廃棄物としてのゴムくずについて紹介してきました。ゴムくずとして想像できる廃タイヤや長靴などは、ゴムくずではなく、廃プラスチック類として分類されることになりますので、分類には知識と注意が必要です。また、天然ゴムをただ増産するだけでは、自然破壊や生態系破壊につながりますので、持続可能な資源とするための取り組みが必要となっています。